今から23年ほど前、パチンコ業界に凄まじい大嵐が吹き荒れていた。
パチスロ機『北斗の拳』の爆発的な大ヒットだ。
どこの店に行っても北斗の拳が島を占領し、職場の先輩も後輩も、誰もが目の色を変えてスロットを打ちに行っていた。だが、俺の戦場はスロット台の前ではない。「株式市場」だった。当時の俺は、日本中のパチンコ店で『北斗の拳』の新台入替の情報があるたびに、せっせと店へと足を運んでいた。出張で遠くの街へ行った時でさえ、仕事終わりにパチンコ店へ滑り込んだ。俺が店で何をしていたか。メダルを借りてスロットを打っていたわけではない。
ただひたすらに、パチスロ機『北斗の拳』の筐体に刻まれた「製造番号(シリアルナンバー)」を盗み見て、メモを取っていたのだ。パチスロ機は1台あたり約35万円。もしこれが日本全国で10万台導入されれば、それだけで350億円の売上が立つ計算になる。
俺は出張先や地元で集めた製造番号のデータを、自宅のパソコンのエクセルシートにひたすら打ち込み、グラフ化して実質的な「出荷台数」の推移を裏で追跡し続けた。エクセルの数字は、明らかな異常値を示していた。
「世間のアナリストや投資家が予測しているよりも、サミーの売上は遥かに爆発している。この会社は、近いうちに必ず凄まじい【業績の上方修正】を出してくる」俺は確信した。
オフィスで上司や同僚がパチスロの勝ち負けに一喜一憂している間に、俺は有り金をすべて、サミー株式会社(Sammy)の株式へオールイン(全額投資)したのだ。結果は、案の定だった。
サミーは市場の度肝を抜く爆発的な上方修正を発表。株価は跳ね上がり、俺の読み通りに1500万円という大金をぼろ儲けする結果となった。職場の連中がスロットのレバーを叩いて数万円の勝ち負けに一喜一憂している間に、俺はエクセル一枚の工夫で、その製造元の利益を丸ごと毟り取ったのだ。
これこそが、俺の言う「痛快なマネーゲーム」だ。さらに、俺はこのゲームをそこでは終わらせなかった。
手に入れた1500万円の利益を、一時の贅沢で消費するような真似は絶対にしない。それが俺の「節制」の美学だからだ。俺はその儲けをすべて、当時非常に利回りが良かった「三菱商事(8058)」の株式へと丸ごと移行させた。
結果、何もしなくても毎年100万円近い配当金が、チャリンチャリンと雪だるま式に口座に振り込まれる「最強の不労所得(複利)」の仕組みが完成した。ギャンブル(スロット)の熱狂の裏にある冷徹な数字をハックし、勝った金はさらに強固な資産(配当株)へと組み替える。
娘よ、これがお前のパパの戦い方であり、お金という交換価値の本当の転がし方だ。
第1章第2考:サミーの裏データをハックせよ。エクセル一枚で1500万円を叩き出した大勝負
第1章【財】

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