第1章第4考:もしあの時、売らずにずっと持っていたら──20代の俺の選択眼と、複利の教訓

第1章【財】

コスモ石油でほんの少し儲けた後、俺の記憶はうっすらとしているが、いくつかの株を買い足していった。

横河ブリッジ、東京応化工業、そして、あの任天堂──。

当時は、無借金の会社や、倒産しそうにない会社、あとはとにかく配当利回りのいい会社を、自分で色々と物色しては買っていたと思う。
今思えば、20代の若造のくせに、なかなか渋くて良いところに目を付けていた。

買った株は、どれもほんの少しずつ儲けが出たら売ってしまっていた。
当時は貧乏人生だったから、株式投資という巨大なマネーゲームに参加していること自体がとにかく楽しくて、面白くて仕方がなかったんだ。

でもな、30年経った今、改めて電卓を叩いてみると、背筋が寒くなるような事実に気づく。

もしあの時、目先の小さな利益で売ってしまわずに、じっとそのまま持っていたら……。
今頃、俺はすでに億単位の資産を手に入れていたはずなんだ。

例えば、当時の元手150万円を、売らずに配当をそのまま同じ株につぎ込んで30年間「複利」で回し続けていたら、株価の上昇も合わせて、計算上は約1億円近くにまで膨れ上がっていたことになる。

今さら悔やんでも、過去の株価はどうすることもできない。

だけど、この手痛い経験から、俺はとんでもなく重要な「お金の性格」を学んだ。
それは、「本当に強い投資とは、派手に売り買いすることではなく、良い会社をじっと長く持ち続けることだ」ということ。

当時の俺には、銘柄を見抜く「知性と工夫」はあった。
でも、時間を味方につけるための「自制心(節制)」が、ほんの少しだけ足りなかったんだな。

娘よ、パパが30年前に犯したこの大失敗を、お前は絶対に繰り返してはいけない。

良いものを、じっと我慢して持ち続けること。
それが、凡人がこの社会で大金を掴むための、一番シンプルで強力な裏技なんだ。


コメント

タイトルとURLをコピーしました